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俺節 第二部【書き起こし⑫】 [俺節]


俺節 第二部 書き起こし⑫



舞台中央、マイクの前にコージ。

舞台上手、階上にテレサ。

二人は久しぶりに顔を合わせた



テレサぁ

私からもお願いです、

もう一度歌わせてあげてください

ちょっと静かにしれけろ。

まだ日本にいてはったんだか!?

橋本:そう。でも強制送還で

  これから成田出発

久しぶりにコージの歌、聞いたら

良くなかったね。

ええ?

さっきの歌、初めて聞く歌で

歌詞の意味が

知らないところもあって。

でも前は分からなくても

気持ちだけは伝わったよぉ。

コージ、

頭の中でいっつも歌われてきた

コージの歌は

こんなんじゃなかったよぉ

頭ん中で歌いあげていた

マリアン:いつもいつもいつも

  いつもいつもいつもだってそう!

今、何が足りないんだろうって

思ったことがあって。

うまく言えないけど

客:じゃ、黙ってろよ

コージ!

コージにはコージのことだけを

頑張ってほしくて。

でしょ!?

それで私は私のことを頑張るって

思って、でもじゃあ

私って何?って思ったりしてて。

それで今

客:いい加減にしなさいよ



待ちきれない客が騒ぎ出した。

するとマリアン姐さんが

ステージ衣装になって

騒ぐ客を威嚇して沈めた。

オキナワもギターをかき鳴らす



テレサ、全部言えよ

上手く言えないよ

上手く言えなくていいから。

コージ、お前もなんか言え



天候不安だったが会場は

とうとう雷雨となった。

その時突然の歌声がした



白樺 青空 南風

テレサ渾身の歌声だ、

アカペラの、

すごい迫力の歌声!

ああ、北国のはぁ は はぁぁぁ

後はコージに向けて

手を指し伸ばして

あーー、と叫ぶばかり



あーーーーーーー

あーーーーーーー

あーーー

あーーー



他に言葉は無く、

叫ぶ声を呼応させていたのが

最後には一緒に叫んでいた

客:何これ?なんなの?



それ、それ。

さっきの歌、もう一度!

さん、はい!

今でも好きさ 死ぬほどに

先ほどとはうって変わって

声に力も気持ちもある。

太く、

ビブラートの効いた歌声は

演歌の歌い方ではないかもだけど

とても胸を打つ歌声だった



わかった、ほんとにわかった。

さっきの歌に足りなかったもの、

たとえば、それは私。

私です。

コージは私とコージでコージだから、

だから私が足りないと

コージの歌じゃない。

私も私とコージで私だから

コージがいないと私じゃない。

ちょっと待て。それって

オキナワ…

あああ



コージはズボンのポケットから

オキナワが自分の背に

置いていった紙を

取り出して見た



この歌、

テレサと一緒に書いたのか?

違うよ。俺一人で書いた

何?

んだな。

オキナワ!ギター!!

ああ、一発かましてやろうぜ

一人で背負わせてくれべしゃ



二人で歌うつもりのオキナワに対して

コージは一人で歌うという。

自分の蒔いた種だからか…

コージの気持ちが分かったのか、

オキナワは自分のギターを手渡した



安物だ。濡らしてかまわないぜ

客:お前ら、いつまでやってんだよ



そんな言葉にも雷雨にも負けない。

改めまして、海驢耕治です。

もう1曲、歌わせてけれ

有無を言わさない声だった



『俺節』

ひとりで生きていけるのと

2017-09-04T04:30:40.JPG

俺の俺節

入管:すいませーん、時間です



降りしきる雨の中、

テレサは連れられて行った。

笑顔、投げキス…

去っていくときの表情は

その日によって違っていた。

テレサがいなくなっても

コージは歌うのを止めなかった



おまあ えぇぶぅ しぃ



渾身の歌声に

拍手が鳴りやまない

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俺節 第二部【書き起こし⑪】 [俺節]


俺節 第二部 書き起こし⑪



コージは一人で

みれん横丁で泣いていた。

そこに戌亥が突然現れた



戌亥さん、なんだべか?

戌亥:仕事だぞ

でもデビューは

戌亥:デビューなんて出来ねえよ

なら

戌亥:行代とお前の

  お披露目ライブの場を

  確保してたんだよ、

  例の引っ越しの歌でよ

すいませんでした

戌亥:デビューは無くなっちまったが

  穴をあけるわけにはいかねえ。

  うちの信用にかかわるからな。

そんなこと言われても歌えねえです

戌亥:コージよ、

  俺が必死で

  頭下げて取ってきた枠だぞ。

  こちらの必死に対して

  せめてもの穴埋めを

  すべきなんじゃねえのか

それはそっだども

戌亥:逃げるなよ



戌亥が言い置いて帰った後も

コージは座り込んだまま、

なんの気力も出ないようだった



テレサぁ、会いてえよ

心の叫びが

切ない声になって

口から出ていた



テレサが強制送還される日が

コージの仕事の日。

プラネットギャラクティカの前座で

歌うのはカラオケテープの1曲目。

「帰れコール」の中、

出てきたコージには

物が飛んでくる始末だ。

それでもコージは

マイクの前に立った。



海驢こんずぃです。

すぐ終わりますから。

ではカラオケテープの

1曲目に入っていた歌です。

『星影のワルツ』


別れることはつらいけど

気持ちここにあらずな歌は

聞いていても

心に響いてこない…

響いてこないから客は聞かない…

尻すぼみになっていくコージに

こっそり客席にいたオキナワが

たまらず声をあげた



おい、ちゃんと聞けよ!

コージ、歌え!ほら



なんとか歌い終えたコージは

どうもすいませんでした

そう言って頭を下げた、が

待て、もう一回歌え。

あいつ、もっといい歌、

歌えるの、知ってるからさ

オキナワ、もういいから

あの歌、歌え。

頼む、あの歌、

みんなに聞かせてやれ

堪忍してけろ



そこにテレサが駆け付けた。

飛行機までの時間、

コージに会いに来るのが

許されたのだ






心ここにあらずの『星影のワルツ』は

ほんとに胸に響いてこない。

熱く迫ってくる歌声と

そうでない声…

一連の劇の中での歌い分けに

ただただ感心するばかりだった

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俺節 第二部【書き起こし⑩】 [俺節]


俺節 第二部 書き起こし⑩



みれん横丁に戻ったコージの元に

北野がやって来た



北:実はな、ちょっと見てもらいたいものが

  あるんだ。

  おい、大橋!

住:巨泉か?



大橋巨泉…私は分かります。

これ、後々にも続くボケなので

分かる年代でよかった!と思ったよ(笑)



明らかにコージを見ながら


北:曲も詞もオキナワが書いた。

  もらってほしいやつがいるんだが

ええ?

北:ほら

いや、おら、受取れねべさ。

おら…いろいろあって、その、

こういうのは今いただいちゃ

北:どういう事情があるが知らねえがな。

  さあ、いっぺん見てやってくれ

だども、おら



渋っているところに

ギターをかき鳴らしながら

オキナワがやって来た



なに、もったいぶってんだよぉ!?

かっこつけずにさっさと受け取れ!

この田舎もん

オキナワ…

よっ!噂じゃデビューが

無くなったらしいじゃねえか

耳がはええな

テレサは?

故郷(くに)に戻ったよ

そう

うん

なら諸々、ちょうどいいわけだ

へ?

お前がなーんもかんもよぉ、

夢も希望も女もプライドも

なーんも無くなったら

俺とちょうどよくなると思ってたよ

北:ほらよ



北野がオキナワを促す。

コージに曲を見せるのだ



気軽な気持ちで見るなよ。

俺の想い、全部乗せたからな

じゃあやっぱり見ねえ

住:ええ?

そんな想い、背負えねえよ

いや、ちょっとくらい見ろよ

ちょっとも見ねえ

イントロだけでも見ろよ

勘弁してけろ



オキナワが見せようとするのから

コージは逃げ回る



帰ってけれ!

ここは元々、俺の横丁だよ

おらぁ、よけいなもの捨てて

自分だけんなって…

なのに自分のことだけでも

重荷に感じてるんだ。

今さら新しいものを

背負いこむことなんて

どうした?

おっかねえんだ



聞く耳を持たないコージに

オキナワは自分の想いが

思うように伝わらなくて

コージに詰め寄っていった



え?

オキナワが突然、

コージに殴りかかった

情けねえこと、言ってんじゃねえよ

おっかねえんだって

そう言いながら

コージもオキナワに殴りかかる

そういう顔するときのほうが

好きだぜ

見ねえからな

見ろよ

いやって

見ろ、こら

自分で歌えばいいべしゃ

俺じゃダメなんだよ。

どんだけ思いを込めて書いた曲も

俺一人じゃ客の心に届かない。

俺はなあ、

誰かの助けを借りないと

自分の想いを伝えられないんだ。

なあ、

北野のおっさんも言ってたろ!?

歌は

自分自身でなければならないっ!

それを否定されたら

自分の全てが否定されるような、

そんな歌を歌え!って。

北:そんなことは言ってない

住:言ったよ

住:言ってましたよ

北:じゃあ、言った!

これが伝わらなかったら

自分の全てが否定されるような、

そんな歌を書いた。

なのに

歌う前から否定しないでくれよ



ここまで言われても

コージは首を縦に振らない。

ひれ伏して頑なになっている



堪忍してけろ

こっちはもう吐いたゲロだ。

今さら飲み込めねえからな。

これは置いていく



伏しているコージの背に

歌詞を書いた紙を乗せ

オキナワは立ち去っていった



住:どうすんだよ?コージ

北:オキナワに言われたよ。

  俺とお前はよく似てるって。

へ?

大:奇遇だな。俺もコージと俺は

  同じだと言ったことがある

北:おお、そうか。

  それじゃ大丈夫だな。

  どっちに転んでも

  歌は捨てない。存分に悩め。

  はー、なんだか

  急に腹減ったな。

  超美味い馬、

  食わせる店があるんだ。

  行くか?

  動物愛護協会から苦情が来るほど

  食うぞ






大橋巨泉が

馬主でもあったことに掛けての

このギャグは私のお気に入り。

原作の時代に

実際に活躍していた人と

そのエピソードが

台詞に盛り込まれているので

お芝居がちゃんと

時代を映していて

リアリティが増す





オキナワの作った歌を

歌う、歌わない。。。

オキナワの迫力ある声と想いに対し、

言葉は多くないけど

簡単には気持ちを変えないコージ。

頑固者だ

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