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俺節 第二部【書き起こし⑪】 [俺節]


俺節 第二部 書き起こし⑪



コージは一人で

みれん横丁で泣いていた。

そこに戌亥が突然現れた



戌亥さん、なんだべか?

戌亥:仕事だぞ

でもデビューは

戌亥:デビューなんて出来ねえよ

なら

戌亥:行代とお前の

  お披露目ライブの場を

  確保してたんだよ、

  例の引っ越しの歌でよ

すいませんでした

戌亥:デビューは無くなっちまったが

  穴をあけるわけにはいかねえ。

  うちの信用にかかわるからな。

そんなこと言われても歌えねえです

戌亥:コージよ、

  俺が必死で

  頭下げて取ってきた枠だぞ。

  こちらの必死に対して

  せめてもの穴埋めを

  すべきなんじゃねえのか

それはそっだども

戌亥:逃げるなよ



戌亥が言い置いて帰った後も

コージは座り込んだまま、

なんの気力も出ないようだった



テレサぁ、会いてえよ

心の叫びが

切ない声になって

口から出ていた



テレサが強制送還される日が

コージの仕事の日。

プラネットギャラクティカの前座で

歌うのはカラオケテープの1曲目。

「帰れコール」の中、

出てきたコージには

物が飛んでくる始末だ。

それでもコージは

マイクの前に立った。



海驢こんずぃです。

すぐ終わりますから。

ではカラオケテープの

1曲目に入っていた歌です。

『星影のワルツ』


別れることはつらいけど

気持ちここにあらずな歌は

聞いていても

心に響いてこない…

響いてこないから客は聞かない…

尻すぼみになっていくコージに

こっそり客席にいたオキナワが

たまらず声をあげた



おい、ちゃんと聞けよ!

コージ、歌え!ほら



なんとか歌い終えたコージは

どうもすいませんでした

そう言って頭を下げた、が

待て、もう一回歌え。

あいつ、もっといい歌、

歌えるの、知ってるからさ

オキナワ、もういいから

あの歌、歌え。

頼む、あの歌、

みんなに聞かせてやれ

堪忍してけろ



そこにテレサが駆け付けた。

飛行機までの時間、

コージに会いに来るのが

許されたのだ






心ここにあらずの『星影のワルツ』は

ほんとに胸に響いてこない。

熱く迫ってくる歌声と

そうでない声…

一連の劇の中での歌い分けに

ただただ感心するばかりだった

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