俺節【書き起こし⑧】 [俺節]
俺節 書き起こし8
スナック店内でコージの歌について
北野が問いかける
北野:君は今、誰のために歌ったんだ?
それは、もちろん、このお客さんのために
北野:そうだろうねぇ。
ではお客さんのために歌っていたそのとき、
君はどこにいたんだね?
質問の意味が分かんねぇよ
北野:じゃあ質問を変えよう。
お客さんのために歌うというのは
具体的にはどういうことだ?
心を込めて
北野:そう、それ。よく言う言葉だね。
でも、心にもいろいろあるよ。
今、君が込めた心というものは
いったいどんな心だったんだ?
返事のできないコージに向けて
北野は言葉を続ける
北野:名もない港に桃の花は咲けど
旅の宿にはやすらぎはないさ、と
君は歌った。
歌の情景が目に浮かんだよ。
表現力はあるようだな。
だが私には、その情景、歌の景色の中に
君の姿が見えなかった。
なぜだと思うね?
答えられないコージに向かって
容赦ない口調で北野が言う
北野:客のために歌いすぎたからだ!
流しの悪いクセだな
でもよ
そんなオキナワの言葉をものともせず
北野はさらに激しくコージに浴びせる
北野:君の歌の中には君がいない!
以上だ
うなだれるコージに
北野が激しくも諭すように言う
北野:君の歌の中に君がいない。
君の歌は
差出人の書いていない手紙のようだったよ。
誰から送られてきたか分からない、
そんな手紙、私なら
気持ちが悪くて開けたくないね。
君の歌の差出人は
もちろん君であるはずだ。
だったら封筒に
君の名前をはっきりと書くべきだ。
客のため?何様だ?
自分の無い歌が誰かのためになるなんて
なるもんか!?
でもよぉ、そんな、自分自分で歌ったら
この客の気持ちはどうなるんだよ!?
北野:だから客は歌い手の中に
自分をみるのだ。
歌い手の背中に自分を感じるのだ。
ならば君の歌の風景の中には
まず君が一人で立つべきだろう。
歌の中で嵐が吹き荒れたのなら
ずぶぬれになるべきは君だ。
歌で大地が引き裂かれたら
奈落の底に落ちるべきは君だ。
歌で誰かが死ぬのなら君が死ね。
客を殺すな。
その屍を見て客は
自分のことのように涙を流すだろう。
歌は君自身でなければならない。
今歌ってる歌を否定されたら
君の全てが否定される、
そんな歌を歌いたまえ
熱をもって一気にまくし立てる、
北野の言葉を聞きながら
コージはうなだれるばかり。
言い返すものを持っていなかった
北野:あっ、喋りすぎたな。
場を白けさせたお詫びに
1曲歌わせていただきます。
♪ちらし寿司なーらー
大橋:先生、先生!
逆にへんな空気になっちゃいますから
北野:じゃ、行くか。北野波平でした
ここは西岡徳馬さんの
見せ場でした。
いや、
自分を魅せようというのではなく、
演歌歌手として
心からコージに言い聞かせている、
そんな気合がありました
永谷園の寿司太郎って
北島三郎さんがCMしてたから
歌ったんだよね、
西岡さんは”へたうま”って感じで
それもよかった(笑)
客:本物、初めて見た
大野:流しの悪いクセとは
言いやがるねぇ
周りとかかけ離れた様子で
コージはうなだれたまま。
それに気づいてオキナワが言葉をかける
おい、コージ。
俺はお前が…
お前がお前の歌を歌ってるところ、
ちゃんと見たからな。
おい、コージ、
聞いてんのかよ!?
コージ!!
コージが自分で歌えるようになるには
どうしても心に留め置かないといけない、
北野波平からの大事な場面でした
2017-07-07 11:56
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